ラタトゥユ

江上種英さん(江上料理学院主幹。昭和60経)

Egg Plant(なす)
 なすはインドが原産で、日本には7世紀後半から8世紀に伝わった。以来、日本人にはなじみの深い食べ物として、各地の気候、土質、食習慣に合った品種が数多く作られている。
例えば「加茂なす」の名で有名な、京都で栽培される丸なすは、肉質が緻密なため、油を吸い込みすぎることもなく、田楽にするととろけるような柔らかさとなる。またしば漬けにしても独特な歯ごたえが生きて大変おいしい。生産しにくく、収量も少ないため、京都の市場では買い求めることができるが、他地域ではなかなか手に入れることができない。
なすの成分は9割以上が水分で、油ともよくなじむため、いろいろな調理法がある。世界中では1500以上の品種があり、ヨーロッパでも地中海沿岸の諸国でよく食べられている。
南仏のニースで、夏の強い陽射しの中、冷たいラタトゥユをオーダーしてみた。
野菜をなすとトマトの水分だけで煮込み冷たくした一品は、バターをたくさん使った料理で疲れた胃にとてもやさしい。海を見つめながら、遠くの地中海文明に思いをめぐらせていると、時の経つのを忘れてしまう。
気がつくといつのまにか、潮風が心地よい時間になっていた。
HOW TO COOKING
ラタトゥユ
1.なす、パブリカ、ズッキーニは一口位の乱切りに。なすは水につけてアクを抜く。
2.トマトは果肉だけを粗切りにする。
3.鍋にオリーブオイルをあたため、みじん切りにした玉葱とにんにくを色づくまでいためる。
4.3の中に1を加え、トマトをちらし、スパイスを入れ水分がなくなるまで煮込む。
5.塩とこしょうで味をととのえる。