からすみのスパゲッティー

江上種英さん(江上料理学院主幹。昭和60経)

Dried Mullet Roe(唐墨)
 「唐墨」は、その形状が中国(唐〉の墨に似ていることから「からすみ」と呼ばれるようになった。「鯔子」と書くこともあり、文字通りボラの卵巣を塩干ししたものである。
江戸時代の酒飲みは、肥前のからすみ、越前のうに、三河のこのわたを天下の三品と称していた。今でも長崎県野母地方にはからすみ造りの名人がいて、ボラの腹から取り出した卵巣を、子供を慈しむように「珍味」に育て上げる。工程の中には、天日干しの時にできる表皮の傷を、薄い和紙で一か所ずつ塞ぐ、気の遠くなるような作業まで含まれているという。
からすみの原料となるボラは、極地を除くほぼ全世界に生息しているので、地球上のあちこちで、この珍味が作ちれている。長崎のよく乾燥されたものもコクがあるが、鑞でコーティングされたフランス産もしっとりとしておいしい。台湾産や豪州産も増えている。
西洋と東洋の十字路といわれるイスタンブールのグランパザールにも、からすみは売られている。トルコといえば羊が思い浮かぶがボスポラス海峡を望むホテルのテラスレストランでは、外国人たちが、からすみのスパゲッティーに舌鼓を打っていた。
僕が、世界の文化が交わるこの街で感じたことは、おいしい食材には国境がないという「当然」のことだった。
HOW TO COOKING
からすみのスパゲッティー
1.スパゲッティーをアル・デンテに茹でざるにあげてよく水気を切って塩、胡椒をする。
2.フライパンにオリープオイルを熱し、千切りにしたニンニクと唐辛子を炒める。
3.フライパンで1と2を和え、粗くはぐしたからすみとみじん切りのバジルを加え、皿に
盛る。