牡蠣の冷製シャンパン風味

江上種英さん(江上料理学院主幹。昭和60経)

Oyster(牡蠣)
 ニューヨークのグランドセントラル駅の地下には、有名なオイスターバーがあり、生の魚介類をあまり食べないアメリカ人が、牡蠣の殻を積み上げている。初夏に訪れた時も、ビール片手の人々で賑わっていた。「英語の綴りでRのつかない5月から8月までは生牡蠣は食べない」という定説のことを聞いてみると「生きている牡蠣に鮮度のことをいうのはおかしい」という答えが返ってきた。
アメリカで夏に食べる生牡蠣は、ワシントン州やルイジアナ州などで養殖されている。特にオレゴン州産の「クマモト」は、文字通り熊本原産だが日本にはすでになく、まさしく幻の牡蠣だ。
生牡蠣にレモンを搾って口の中に滑り込ませる。「育った海の波が記憶されている」といわれる体液がジュワッと広がって、至福の時間が訪れる。牡蠣の育った環境が、それぞれの個性を主張し、各地の自然豊かな海に思いを馳せることができる。
牡蠣はそれ自身の持つうま味が強いので、サッと火を通した料理もおいしい。さあ、シャンパンを抜いて牡蠣を楽しもう。黄金の泡の中に、牡蠣の育つ澄んだ海の風景が浮かび上がってくる。人間のDNAに組み込まれた「海の記憶」がよみがえってくるのだ。そして失われつつあるきれいな海が、本当にいとおしくなってくる。
天然の牡蠣には真珠が入っていることがある。グッドラック!
HOW TO COOKING
牡蠣の冷製シャンパン風味
1.牡蠣は身を殻から外し、身から出た汁と共に鍋に入れ、シャンパン(なければ白ワイン)少々、レモン汁、胡椒、タイム、ローリエを適量加え、蓋をして軽く蒸し煮する。
2.殻は洗って、その上に牡蠣の身をのせる。
3.蒸し汁にゼラチンと塩を加え2.にかけ冷やす。
4.固まったらキャビアとチャービルで飾る。