鱚(きす)の黄金焼

江上種英さん(江上料理学院主幹。昭和60経)

SILLAGO(鱚・きす)
 品川の高層ビル街を出発した急行は、一時間程で太陽の降り注ぐ三崎口に着く。車でしばらく行くと青い海を背景に「シーボニアヨットクラブ」が見えてくる。今日は海のロールスロイスと呼ばれるフィンランドSWAN社製の40ftのヨットに乗るのだ。船の名前は「レオナルドイッシマ7世」。造船所のオーナーのフェラガモ氏の名前と、この船のオーナーである島崎保彦さんの名前からとった日伊合作のネーミングだ。キャビンの中は寝室やシャワールームはもちろん、本格的なキッチンも完備されている。乗船し、他のゲストたちとシャンパンで乾杯していると、クルーが浜の新鮮なきすを料理してくれた。海の男は料理もうまい。彼はアメリカズカップの日本艇にも乗っていたそうだ。
食べ物とワインはお腹におさめて、しばしの間クルーズ。帆で全面にうけた風は、パワフルに巨大なヨットを引っ張ってくれた。バンク(傾き)とバウンドは想像以上だが、そんな状況下でも3人のクルーはてきぱきと最適な向きに艇を誘導するのだ。
日が少し傾き掛ける頃、マリーナに戻った私たちには、遅いランチが待っていた。新鮮なシーフードとよく冷えたワイン。
「乗ってるだけでも、結構エネルギー使うから、お腹すきませんか」仕事を終えたクルーが、グラス片手に話しかけてきた。
「海が荒れると、何十時間も飲まず食わず。でも不思議と気になりません。そのかわり凪の時なんかは、のんびり釣りをしたりしてます。それを料理して一杯。至福の時間ですね」
真っ黒な顔で豪快に笑った彼は、今頃世界のどこかの港で杯を傾けているのだろうか。豊かな海に乾杯。
HOW TO COOKING
鱚(きす)の黄金焼
1.きすはうろこを引き、胸びれの下で頭を切る。
2.わたを除き、血を洗い水気をふく。
3.卵黄、酒、みりんを合わせる。
4.2を青しそで巻いて薄力粉をまぶし、3をぬってフライパンでこんがり焼く。