平成28年11月度の二木会を次の通り開催しましたのでご報告致します。
1.日時 平成28年11月10日(木) 18時30分~20時40分
2.テーマ 「日本経済の行方」
3.講師 跡田直澄氏 大阪大学博士(経済学)小泉内閣時、竹中平蔵氏と共に政権の経済ブレーンを務める
(昭和51年経済卒 慶応義塾大学教授、大阪大学教授を経て、現在、嘉悦大学ビジネス創造学部特任教授)
4.出席者 24名
講演の要旨
ご講演頂いた跡田教授は、3年前に引き続き3回目となります。今回は日本経済の行方を考慮すべき点として、先ず海外要因を見ます。高い成長率を達成してきた中国も2010年から7~9%に落ち込んでいるが、公表値の半分が実態ではないか?アメリカも栄光の過去から1970年以降は4%以下の停滞を続けてきた。まもなくFRBが金利を引き上げれば、金利差により日本は円安に進む。次期大統領となったトランプ氏も金利引き上げをサポートしている。また、予想外の結果になったイギリスのEU離脱は、今後交渉を重ねていくので明確な離脱にはならない。その他、インドの人口増は潜在的な成長を促すが、ロシアは原油と天然ガスの資源外交がその成長のカギとなる。
そこで、日本の実質経済をみればアメリカと同様、1980年の4%から90年以降は1%からマイナスの間をさまよっている。高度成長は20年しか続かない。製造業が海外進出し、賃金の安い国などで生産するため経済成長は低下する。例えば、アメリカの自動車産業は海外の工場で、日本のトヨタでも半分は海外生産である。消費をもたらす賃金には投資がキーとなる。円安の為替なら投資が増え、雇用を増加させる。政策的には、経済理論の「フィリップス曲線」が示すように日銀は物価を2%よりも上げることで雇用を増やせる。失業率を3%以下にするなら物価を0%より高く誘導すべき。また、アメリカで起きている格差社会は移民がホワイトカラーの低所得化を招いている。トランプ氏は、国内生産、保護貿易へ戻り、アメリカ人雇用と国内経済を向上させる政策を取るだろう。
本論である今後の日本経済を検証する。
(1)日銀の景気異次元政策・・・国債を発行して貨幣を市場にばらまく。マイナス金利による日銀への追加的預金の削減。金融業界への補助金縮減をねらう。
(2)雇用対策・・・往年の終身雇用制度が崩壊している。雇用増大のためには、物価が上がり通貨量が増え円安が起こることが好ましい。
(3)財政投資・・・公共投資は物流をも活性化するので政府が6兆円投資をすれば地方も加わるので、日本全体で20兆円の投資増となる。子育て世代や高齢者への給付金も適切である。ただ、財政の健全化からすると、赤字増大が財政危機を来すものだが、そのような事象には陥らない。日本の国債は安全で日本人が保有しているので1,000兆円の赤字でも、国債を連結対象にすると純資産として実質450兆円くらいの規模となる。
(4)成長戦略・・・規制緩和を進めるため、農協の改革とインバウンドの民泊実施も必要になる。また、GDP1%の5兆円の付加価値を生み出すためには、特に団塊の世代における健康、レジャー産業等での消費支出を促進するため鉄道、飛行機の運賃や通信、電波の料金の大幅引き下げが望まれる。
(5)東京五輪・・・大胆に行政投資を25~30%増やせば1兆円の経済効果は可能。
(6)格差是正・・・本来世代内で比較すべきもの。年齢別では団塊世代の不平等化が進展しているが、以前の世代と変わらない。今後は、制度維持のため物価が上がらなくても年金の2割カット、それを補うためにも高齢の生活保護世帯の働く場所を確保することが肝要となる。
(7)21世紀の目標・・・2%の経済成長を目指す。人口減を外国人労働者で賄う。移民ではなく、5~10年の滞在型で労働力を補てんする。TPPは、トランプ氏の保護貿易主義に拘わらず、日本としては輸出効果を重視して締結すべき。
(新道正雄 記)
今回の講演会は、トランプショックの翌日に当たり、実に時宜にかなったテーマでありました。
我が国の平成26年度末の資産・負債差額は520兆円の赤字であるが、地方公共団体(東京都は財源豊か)、日銀の分も加えるとほぼゼロとなる。財務省が叫ぶ財政の危機的状況とは、借金が多いだけであり、資産・負債バランスでみるとそれほどひどい状況ではないとのお話でした。
我が国の鉄道運賃は、北海道の一番採算の合わない路線の運賃を基礎にして算定されているため、新幹線をはじめ利用者の多い都市部を営業基盤とする鉄道会社はぼろ儲けをしている。
その運賃レベルを横にらみしながら設定されている航空運賃も諸外国と比べると割高になっている。
格安航空会社(LCC)の利用により訪日観光客が急増しインバウンド需要を拡大させたように、国内の鉄道・航空運賃が大幅に値下げされれば人の移動も更に活発になり消費支出増加にも結び付き経済活性化の大きな牽引力になるのではないかと思う。岩盤のように強固な諸規制にドリルの鋭い刃で穴を開けられるか?
(木口久喜 記)
熱心に聴き入る受講者の皆さん。
湯河大先輩から跡田教授へ記念品を贈呈
(湯河様からは10月末に薨去されました三笠宮崇仁親王殿下との思い出を
語って頂きました。)