関西桜友会令和元年5月度 二木会開催報告

1.日時         2019年5月9日(木) 18時30分〜

2.テーマ 「日本画の愉しみ~明治の金メダリスト・大橋翠石をめぐって」

3.講師        村田  隆志氏 (平成18年 哲博士)

                     大阪国際大学  国際教養学部准教授

4.出席者     24名

 

講話の要旨

「芸術の価値」とは、鑑賞者が心を動かされるもの、つまり、心の振り幅を大きくする絵画や作品を創る芸術家が良いと言える。演者は、学習院大大学院で美術史を専攻し、特に水墨画で自然花風を描く松林桂月等の研究を深めた。相国寺の承天閣美術館や神戸新聞社の企画などで展覧会の監修も美術振興のため展開している。

大橋翠石(1865~1945)は、岐阜県大垣市に生まれ神戸市須磨区に移住した日本画家で、「虎の翠石」と言われ名高い。鐘淵紡績支配人の武藤山治や松方幸次郎ら、財界人の支援を受け、「阪神間の資産家で翠石の作品を持っていないのは恥」とまで言われた。翠石の画は「日本古画評価見立て便覧」(昭和5年)で、東の横山大観、西の竹内栖鳳と並ぶ3000円の画価にて珍重されていたが、神戸の博物館・美術館にはいまだ一点も所蔵されていない。

翠石は、内向的な性格で、神戸には結核の転地療養のために訪れていた。その反動として、強い虎の力にあやかりたいと、特に虎を画いた。円山応挙の虎を見て、独特の毛書き手法で虎を完成していった。そして、1900年(明治33年)のパリ万国博覧会にて「猛虎図」は、日本人で唯一の金牌を受賞した。また、晩年期は、リューマチを患い、一時期は左手で描いてもいる。20歳で夭折した息子の不幸も乗り越えるため、無欲恬淡に虎以外の動物画、観音像や山水の作品を手掛け、その作品は岐阜県美術館を始め全国で所蔵されている。

1927年、東郷平八郎や金子堅太郎らが発起人となって、上野で「百幅画会」が開かれたほか、明治・大正の両天皇には作品を献上している。最近では安倍首相がプーチン大統領に翠石の虎の掛け軸を贈った。2020年4月には、兵庫県立美術館で大橋翠石の画業を通覧する展覧会の企画を、現在監修者として担当している。

 

以上

      

    講演中に村田先生がご自身所蔵の大橋翠石の作品をご持参下さり、ご披露してくださいました。実物を間近に観ることが出来、貴重な体験をさせていただきました。

    また、当日は北河原会長のお誕生日で、会員皆でお祝いの乾杯をさせていただきました。

     お久しぶりのコーナーでは、平成30年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を見事受賞された菅原真弓大阪市立大学教授(昭和11年哲博士卒)が、受賞理由の著者『月岡芳年伝~幕末明治のはざまに』を披露されました。

     今回は北河原会長、大先輩の頴川様、東京からお越しの中高桜友会会長の沼田様、副会長の山崎様に昨年卒業したばかりの若手まで24名が参加して下さいました。

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