平成29年12月度の二木会を次の通り開催しましたのでご報告致します。
1.日時 平成29年12月14日(木) 18時30分~20時30分
2.テーマ ~世界最高の技術力!~ 「日本美術の華・浮世絵の魅力」
3.講師 菅原真弓氏 (平成2年大文哲卒) 大阪市立大学 教授
4.出席者 32名
講演要旨
ご講演いただいた菅原様は、大阪市立大学の教授を務めておられます。浮世絵の鑑賞方法、版画の特質、制作過程及び芸術性についてお話し頂きました。
浮世絵は、日本美術で初めて「売り物」として制作された、いわば商品であったこと、それだけに制作時の時代背景、特に流行に左右されるものであったことを知った。絹や紙本に着彩された肉筆画の一点物が当初主流であったが、需要に応える形で、後には、一枚の原画から大量に複製できる版画が主流となっていくに至った。
「錦絵」は浮世絵版画に含まれることも学んだ。江戸時代の半ば、十八世紀の中頃に、鈴木春信が多色摺り版画の浮世絵を始め、これが「錦絵」と呼ばれている。
浮世絵版画の主題には、①美人画、②役者絵、③名所絵(風景画)、④武者絵、⑤戯画及び世相風刺画、⑥春画などがある。
浮世絵版画は、江戸時代の人々の興味や関心、そして暮らしを生き生きと映し出した媒体であると言える。街道を描いた名所絵では旅籠などの宿泊施設や土地の名産品なども描かれた。それに加えて、時代の空気に敏感に反応する媒体ゆえに、江戸末期の黒船来航や幕末維新期の諸事件などをも描き出し、メディアとしての役割を果たしていくことにもなっていった。
(文 新道正雄)
今回、数多くの浮世絵をご紹介頂いた中で、歌川広重の「東海道五十三次・庄野白雨」は、激しい夕立の中、道を急ぐ旅人の情景がリアルに伝わってきた。斜めに強く降りつける雨、険しい坂道、背景の樹木のぼかしによる遠近法等、素晴らしい技法で描かれており、江戸時代によくぞこれほどに精緻な絵を作り上げたものだと思った。
浮世絵は幕末から明治にかけて大量に海外に流出し、それらが欧州の印象派画家であるゴッホやモネに多大な影響を与えたという。
11月に実施した大塚国際美術館バスツアーで鑑賞したモネの作品で、自分の妻に着物を着せ日本趣味が溢れる「ラ・ジャポネーズ」を思い出した。また、モネはアトリエの庭を日本庭園風にして名画「睡蓮」を描いたほどに日本に惚れ込んでいたようである。
浮世絵が西洋絵画の巨匠達に与えた影響の大きさを知るにつけ、これはまさしく世界最高の技術力だと講義を聴きながら実感した。
(4月の高畑新一氏の講演で、「第一次大戦中、鈴木商店ロンドン支店内の専用室を 拠点に、本業の傍ら美術品の収集活動を行った川崎造船所社長・松方幸次郎氏が、パリの宝石細工師アンリ・ベベールが40年かけて蒐集した浮世絵約8千点を買い取り日本へ移送したとの話を思い出した。いわゆる松方コレクションである。)
(文 木口久喜)
講演中の菅原教授
質疑応答の模様
畑中世話人から菅原教授へ記念品の贈呈