第23回経済学部同窓会講演会

第23回
経済学部同窓会
講演会 “わが国のエネルギー事情”

河野博文氏(昭39年高卒)
元資源エネルギー庁長官

平成16年11月17日(水)於 百周年記念会館

エネルギーを語るには3つの要素がある。安定供給と環境と効率性だ。この3つは互いに相容れない要素を含み、3つをうまく均衡させながら満足させなければならないというのが、エネルギー政策の悩みだ。

効率性は、経済性で、長期的には原子力が安いと思うが、現状では、石炭が石油や天然ガスよりも安いし、中国、豪州、米国、ロシアにもあり、供給の分散のためにもよく、安定度の高い資源である。しかし環境の面ではCO2がたくさん出るのでよくない。ガス量では石油80%、天然ガス60%に比べ量が多い。

エネルギーの供給構造を考えると、1973年と今日の比較で、石油は77%から49%、石炭15%から19%、天然ガス・原子力2%から13%へと変化した。日本のエネルギーが、石油から他のエネルギーにシフトしたこと、日本経済が成長する中で円高が進んだこと、エネルギーを減らすような経済体質になったことなどが相乗効果となって現れた。電力会社は、石油73%から63%、石炭5%から10%、天然ガス2%から26%、原子力3%から34%へと変わった。

エネルギーセキュリティーは国家的に重要だ。日本の自給率は20%に過ぎない。米国は70%、仏国50%、独国40%で、日本の低さが際立っている。プッシュ大統領は「わが国には250年分の石炭がある」といっている。

石油への依存度では、米国40%、仏国・独国が30~40%に比べ、日本は50%と高い。しかも日本は中東依存度が86%と非常に高く、米国、仏国、独国の20%程度との差は大きい。日本は輸送コストでは、中東の石油が最も安く、どうしても中東に頼らざるをえない宿命にある。

エネルギー問題を考えるとき、中国がキーポイントになる。現在エネルギー消費がどんどん増えており、マーケットへのインパクトは計り知れない。環境に対する影響とともに重大な問題である。中国の成長は非常なスピードで恐ろしいくらいだ。また、中国の国策の石油会社は世界の各地で石油利権を求めて投資している。国策会社なので資金にかなり力がある。

一方、投資の面でいうと、メジャーは巨大で、ヒクソンモビールの経常利益は年間2兆円であり、ガリバーである。

供給構造上の問題でいうと、価格はどんどん上がり、供給が追いつかない。今はOPECの供給弾力性が非常に乏しくなって、供給の半分以下になっている。大きな存在のロシアもそれほど余裕はない。潜在的に値上がりの背景がある。

さらにポリティカルリスクが見える。イラクが不安定であり、サウジに飛び火するかもしれない。ナイジェリアで暴動が起こったり、ベネズエラではよくストライキが起こる。投機も非常に盛んだ。大量の投機資金がこの世界に入っている。金融マーケットの金がほんの少し石油の投機市場に入ってくれば、それだけで大きく値段を左右する。

政策的に一番高いハードルは環境だ。地球温暖化防止条約が発効し、日本は1990年に比べて二酸化炭素排出量を6%減らさねばならない。日本は「乾いた雑巾を絞る苦しみ」で大変な努力をしなければならない。

構成/南坊文寛(昭49経)、江島 昭(昭41経)

カテゴリー: 第 23回(H16.11), 総会 タグ: パーマリンク